2017年11月16日

9月 晩夏の大内宿と塔のへつり、湯野上巡り


会津西街道の賑わいを伝える、
山間の宿場町、大内宿。

2017年9月某日

10大内宿玉澤屋☆DSC02691s.jpg01大内宿全景☆DSC02694s.jpg06大内宿☆DSC03404s.jpg

 会津藩主、保科正之によって整備され、若松城下から下野(現:栃木県日光市)に至る道は、かつて「会津西街道(日光街道)」と呼ばれ、東北および北陸諸国からの参勤交代や、会津藩の廻米などの物流を支えた重要な交通路であった。1884年(明治17)年、新道(現:国道121号の前身)の整備に伴い主要街道としての役割は終えたものの、下郷エリアを中心とした会津西街道筋には、今なお歴史の面影を見ることができる。

13大内宿町並み展示館☆DSC03516s.jpg16大内宿全景☆DSC02830s.jpg18大内宿村社高倉神社☆DSC02745s.jpg23大内宿村社高倉神社☆DSC02769s.jpg
20大内宿村社高倉神社☆DSC02754.JPG33大内宿店先☆DSC02817s.jpg08大内宿☆DSC02683s.jpg
26大内宿こめや☆DSC02923s.jpg28大内宿こめや☆DSC03450.JPG34大内宿みなとやしんごろう☆DSC02917.JPG04大内宿☆DSC02711s.jpg

 そのひとつ「大内宿」は、“半農半宿”の宿場町の佇まいを残す、重要伝統的建造物郡保存地区。南会津の深い山間に位置し、集落を貫く約450mの道の両脇に、民宿や土産物屋など約50軒の茅葺き民家が並ぶ姿は江戸時代の景色を彷彿とさせてくれる。
 「大内宿」までのルートは東北自動車道から磐越道を進み、会津若松ICから118号線を進む道と、白河ICから289号線を北上する2つがある。前者は会津市街地の観光にも便利。後者は近年道路が整備され、基幹道となる121号線まで約1時間の好アクセスだ。
 訪れた日は、爽快な青空が広がる行楽日和。福島県でも屈指の人気観光地とあって、通りは今日も賑やかだ。踏み固められた土の道沿いには古い石の祠や火の見櫓、蔵の姿も見え、山の自然水を引いた用水路では、冷えた飲み物が涼しげな景色を奏でている。
 まずは、かつての本陣跡を復元した「町並み展示館」(大人1人250円)へ。内部にはかつての生活用具をはじめ、今なお受け継がれる茅葺き屋根の葺替えにまつわる興味深い資料などが紹介されている。「正法寺」や「子安観音堂」が鎮座する最奥の高台からは、ポスターなどでもよく見かける宿場全体の姿も一望できる。
 通りのちょうど中程だろうか。“しめ縄”が掛けられた鳥居を入った先には、喧騒と無縁の美しい農村風景が広がっていた。山へと真っ直ぐに伸びる道の先には、鎮守の森にひっそりと佇む「高倉神社」もある。この社の鳥居越しに望む集落の景色もまた風情ひときわだ。観光客がほとんど訪れない神社は、「大内宿」の本当の静けさに会える場所かもしれない。
 ところで「大内宿」の魅力は、何と言っても江戸時代の旅人気分で郷土色豊かな味わいや土産を品定めしながら、そぞろ歩きが楽しめることにある。店の軒先には手作りの民芸品や素朴なB級グルメが並び、目移り必至(笑)。連れは到着してすぐ「三澤屋本店」の熟成酒を試飲(笑)。そのまま甘辛い味噌の香りにつられ、「そば処 みなとや」の“しんごろう”(200円)を堪能(笑)。昼時には長ネギを箸代わりにしていただく名物の“高遠そば(ねぎそば)”と迷った挙句、「味処こめや」で、コシのある冷蕎麦と揚げたて餅に蕎麦つゆをかけていただく「おろし揚げ餅そば」(950円)と「栃餅」(550円)をいただく、まさに食欲三昧(笑)。
 故郷を誇りにする地元の人々とのふれあいにも癒される「大内宿」は、その味わいも含め、多くの旅人を魅了する心の宿場町だ。「大内宿」を訪れるなら、江戸時代の旅時間にならい、じっくりと半日かけて土地の自然や暮らしを追体験してみるのも楽しいだろう。

41瀧の湯☆DSC02374s.jpg44瀧の湯夕食☆DSC02991s.jpg47瀧の湯夕食☆DSC030727s.jpg48瀧の湯夕食☆DSC03095s.jpg
49瀧の湯月の湯夜☆DSC03110s.jpg53瀧の湯月の湯早朝☆DSC03168s.jpg52瀧の湯月の湯早朝☆DSC03184s.jpg
51瀧の湯早朝☆DSC02357s.jpg56つり橋の里DSC02420s.jpg60つり橋の里七面神社☆DSC02488s.jpg57つり橋の里☆DSC02459s.jpg

深まる季節が迎える初秋の風雅。
早起き千両、の朝ぼらけ。

 瀧の湯に到着したのは夕暮れどき。ロビーの窓越しには“さいかち”の大木が、たわわな実をつけ、ひと足早い秋の訪れを告げている。
 本格的な豊穣の季節を前に、宿の料理もより魅力的に一新したようだ。食指をそそる盛り付けをはじめ、洒落た器使いや新しい趣向の一品など、五感に届くもてなしが嬉しい。
 食後、連れの提案で向かった「月の湯」は、遠くに会津市街の夜景を望む屋上の貸切露天風呂。この季節、夜ともなれば、東山はもう身震いする寒さ。足早にどぼんと湯に浸かり、静寂の温もりに身を預ける至福のひととき。その心地よさと開放感にふと思いつき、明日の朝もまたこの湯を訪ねようか、と連れと意気投合(笑)。
 大正解の夜明け。低く垂れこめた靄に朝の光が乱反射し、仄かに色づく姿は想像を超える荘厳さだ。まだ人気のない朝のロビーから眺める蒼い竹林も美術絵画のようだった。
 朝食までの時間を利用し、そのまま宿周辺の散策へ。東山温泉の入口方面へ5分程ぶらり歩いた先で見つけた「里山農園・つり橋の里」の看板。気になり進んでみると、ちいさな吊橋から薄暗い杉林のトンネルを抜け、視界が開けた先に長閑な農園が現れた。山裾には「七面神社」の赤い幟も見える。朝露に濡れた緑に、やわらかな光が降り注ぐその景色は、まさに清浄そのものの心洗われる眼福。早起きのご褒美だ。1時間程歩いて戻り、腹を空かせていただく朝食は、いつにも増して天恵の美味!今日は長い長い一日になりそうだ(笑)。

62塔のへつり☆DSC03374s.jpg64塔のへつり☆DSC02662s.jpg65塔のへつり☆DSC02604s.jpg
66塔のへつり虚空蔵菩薩☆DSC03371s.jpg69塔のへつり☆DSC03395s.jpg71塔のへつり吊り橋より☆DSC03336s.jpg

仏都会津の祈りの景勝地。
国の天然記念物、塔のへつり。

 瀧の湯を出発し、118号から121号線経由で約45分。向かった「塔のへつり」は、長い年月の浸食と風化によって大川の断崖が削られてできた景勝地で、国の天然記念物に指定されている。ちなみに“へつり”とは方言で“険しい崖”を指し、その形が塔のように見えることからこの名が付いている。
 “屏風岩”、“烏帽子岩”など、それぞれに名前の付いた奇岩は全長約200m渡って続くようだ。しかし経年による崩落などにより、現在は吊橋が架けられた“舞台岩”周辺以外は立ち入り禁止となっている。対岸の巨大な岩の下にはちょっとした遊歩道もあり、浸食された部分を間近で見学できる(歩きやすい靴を推奨!)。岩を削って造られた狭い階段を上った先には「虚空蔵菩薩」が祀られた古い御堂も鎮座し、会津らしい自然崇拝の神聖な雰囲気が漂う。
 周囲には広い駐車場をはじめ、同名の駅(歩いて約3分)や食事処、土産物屋なども充実。翡翠色の川面と奇岩のダイナミックな景観は、カメラ好きにもたまらない絶景スポットだ。

72中山風穴☆DSC02556s.jpg74中山風穴☆DSC03307s.jpg75中山風穴☆DSC02567s.jpg76中山風穴公園☆DSC02579s.jpg

自然の神秘にふれる風穴で、
晩夏の涼を楽しみながら。

 そこから車で約5分。辿り着いた先は、121号線を会津方面へ再び戻り、湯野上の少し手前、中山(標高約855m)の山腹にある「中山風穴」。ここには約200万年前に地下から現れた火成岩の隙間から冷風が噴出している自然風穴群。風穴は大小幾つか点在し、道からすぐの場所には、かつて天然の冷蔵庫として食物の保存や養蚕に利用された冷感体感施設「中山風穴倉庫跡」がある。早速、中に入ってみると、明らかに周囲とは異なるひんやり感!壁に近づき手をかざせば、岩の隙間から確かに微かな冷風が流れてくる。丁度いらした管理者の方にお話を伺えば、季節や日によっても気温は変動するようだ。夏であれば、3度程度は周囲の気温より低いのだという。
 このため風穴周辺には、一般的に標高1,500m以上の高山で育つとされるオオタカネバラの本州最大規模の群生地となっている。山中には登山コースやハイキングコースも巡らされ、途中の展望台までは車で行くことも可能。見事な大樹が目を引く整備された憩いの広場もあり、涼を求める真夏の行楽にもおすすめだ。

78湯野上温泉駅☆DSC02533s.jpg79湯野上温泉駅☆DSC02509s.jpg82湯野上温泉駅☆DSC03281s.jpg
83湯野上温泉駅☆DSC02545.JPG84湯野上温泉駅足湯☆DSC03292s.jpg88湯野上温泉えびす屋☆DSC03553s.jpg89湯野上温泉夫婦岩☆DSC02941s.jpg

出会いに癒される鄙の湯郷。
景色と人情の湯野上巡り。

 鉄道ファンならずとも知っている「湯野上温泉駅」は、全国でも珍しい茅葺き屋根の駅舎。1932(昭和7)年、会津国有鉄道の駅として開業したここは、1987(昭和62)年、大内宿に至る南会津の玄関口として、宿場の街並みにならい茅葺に葺き替えられた。以来、風雨にさらされた佇まいが年々味わいを増し、訪れる人々の郷愁を誘っている。待合室には夏以外の季節、実際に炭をおこし使用している囲炉裏もあり、煤で燻され飴色に変色した駅貼りポスターが、何ともたまらない雰囲気を醸している。
 春の桜並木をはじめ、四季を通じて絵になる駅舎は、記念撮影のためだけに入場券を買い求めに来る観光客も多い。私たちも、もちろんそのひと組(笑)。舎内では、そんな人々のためにセルフサービスの日本茶も用意しているが、今回は連れの希望で名物の「くるみようかん」(一個60円/写真は2個入・小法師付セット  250円)を売店で購入し、手作りの「冷やし甘酒」(100円)と一緒にいただくことに。
 時間がゆったり流れるとは、まさにこのことだろう。「湯野上温泉駅」は茅葺きに生まれ変わって以来、地元のお母さん達3名が駅長をはじめ、売店スタッフを兼任している。どこかほっと和む居心地は、そのせいかもしれない(笑)。
 “江戸風情と湯けむりの里”のキャッチフレーズどおり、温泉街の中にある駅には2012年誕生した無料の足湯「親子地蔵の湯」も併設され、湯に浸かりながらのんびりとローカル線を往来する電車の風景が楽しめる。
 さらに駅の駐車場に車を停めれば、温泉街の散策も自由自在だ。周囲には立ち寄り湯のできる旅館や民宿もあり、私たちも駅に程近い大川沿いの民宿「えびす屋」の露天風呂へ。
 本館と道路を挟み、懸崖に沿って下へ続く階段の先にある風呂は、利用するには一旦、本館への申し込みが必要(入浴料500円・貸切風呂1人1,000円)。女湯、男湯、家族風呂と渓谷に面した露天風呂は、民宿にして圧巻のロケーションだ。嬉しいことに、訪れた時は先客もない貸切状態(!)。女湯からは対岸に湯野上温泉の名勝“夫婦岩”も展望できるようだ。気になる湯は無色透明の単純泉。温度はかなり熱めだが、源泉掛け流しの贅沢には代えられない(笑)。
 景色に、食べ歩きに「会津西街道」の魅力を訪ね歩いた今回。かつて「大内宿」を訪れた小説家、司馬遼太郎は、江戸時代と同じその景色のすがすがしさに感嘆したという。彼は街道について作品のなかで、“空間的存在ながらも、それは決定的に時間的存在であり、過去という膨大な時間の世界への旅”だと述べている。 人間は古代から“暮らし”に息づく存在であり、その場所にしかない天や風のにおいがあるかぎり、そこに構築された文化や動き続ける風景を見ることができるのだという。まさに旅の真髄に切り込む言葉だ。“街道”という響きには、長い道程を徒歩だけで歩き訪ねた先人たちの血の通った歴史が宿っている。時代という変容の中に、変わらないその浪漫を探してみるのもまた、会津歩きの醍醐味だろう。








posted by aizuaruku at 17:10 | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする